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                | コミック・ポテンシャル(ル テアトル銀座、2001年2月20日)
                    
                      | 作・アラン=エイクボーン  翻訳・小田島恒志  演出・宮田慶子
                        高嶋政伸/七瀬なつみ
                        岡田真澄/松金よね子/小林勝也
                        PARCO・松竹提携公演 |  |  |  イギリスのオリジナル戯曲を日本版キャスト・スタッフにより上演。ジャンルはコメディ。2幕、2時間40分。 タイトルは日本語で「潜在的喜劇性」、もしくは「喜劇の可能性」。あるいはそのダブルミーニングだそうです。 てっきり東宝作品かと思ってたのはやはり高嶋(弟)の存在が念頭にあった為かしら。 サマリーコメディ作家志望の若者、アダム(高嶋)は、財閥総帥の叔父のコネを頼りに、系列の地方TV局を訪れる。彼がコメディ映画の神と崇拝するかっての巨匠、チャンドラー"チャンス"テイラー監督がそこで仕事をして
 いると知り、思いあまって局のスタジオまで面会に押し掛けたのだ。
 だが、ただ糊口を凌ぐ為に昼メロを捨て鉢気味に撮り散らかしている監督に、昔日の栄光はなかった。
 俳優は全て、人間より安上がりにつくアンドロイド「アクトロイド」。スタッフはそれらを制御する
 エンジニアとプログラマの2人のみ。トラブルが重なり、アダムの見学中にその撮影も中断されてしまう。
  一人スタジオにとりのこされてしまったアダムは、暇つぶしにライブラリーのバスターキートンを観ている最中、一体の女性型アクトロイドが作品中のギャグに反応していることに気付く。ロボットが自発的に笑う?
 あり得ない事だったが、興味をもったアダムは「JCF31333」、ジェシートリプルスリーという愛称を付けた
 そのアクトロイド(七瀬)に、古今のコメディの知識を教えていく事にした。ダブルテイク、パイ投げ。
 果たして彼女は明らかなユーモアのセンスと異常な(といってもロボットとしては当然の)飲み込みの早さを
 見せる。
 当初はその事実を信じられなかったチャンドラー監督も、実際に彼女の高いコメディエンヌとしての資質を
 目の当たりにし、アダム同様すっかり魅了されてしまい、燻っていたコメディへの情熱にも再び火が点る。
 二人は示し合わせて、局には内密に彼女の為のコメディシリーズの企画を練り上げる。その過程でジェシー
 にはより高度な感情も育っていくのだった。
  だが、局のオーナーでもあるアダムの叔父(小林)も交えたプレゼンは、かってアダムが袖にした支局長、カーラ(松金)の差し金によって台無しにされてしまう。通常のドラマにアクトロイドが主演などならないと、
 ジェシーが外されてしまうばかりでなく、ユーモアや感情を備え始めた彼女は危険視され、記憶と人格の消去
 処分が決定されてしまったのだ。
 深く失望し、悲しみに暮れるアダム。消される前にダンスがしたい、と望むジェシーに応え一緒に踊るうち、
 彼は自分が、彼女に対し好意以上の感情を抱いている事を知る。
 そしてせめてジェシーに何かしてあげたくていたたまれなくなったアダムは、外の世界を見せようと彼女を
 連れて密かにスタジオを出ていくのだった。それは幾重もの意味で禁じられた行為ではあったのだが…
 (第一部、幕) --- しばらくしてジェシーとアダムの失踪が発覚した局内では、事が大きくなる前に何とか収めたいチャンドラー
 監督と彼のスタッフ達が、ジェシーから発せられるビーコンを頼りに懸命の捜索を始めていた。アクトロイドは
 高価だし局や彼の叔父のスキャンダルに発展する事態を避けねばならないのは勿論、だが何より彼等にとって
 二人は最早かけがえのない存在になっていたのだ。
 一方、街に出たアダムは、ジェシーの無邪気さ、一般常識の無さに振り回され、彼女がアンドロイドである事を伏せておくのに四苦八苦しながらも、ショッピングや食事を一緒に楽しんでいた。そして深まる二人の想い。
 だが、どこからかリークされた情報により既にマスコミ陣が彼等の滞在するホテルを取り囲んでいたのだ。
 アダムと助けに現れたスタッフがオトリになることによって、ジェシーは脱出に成功するが、アダムとは離れ
 ばなれになってしまう。
  合流地点の安ホテルに至るまでの間、初めて彼の庇護下を離れたジェシーは、降り掛かる危機を持ち前の演技力で退けるが、同時に、今まで自分でジェシー本人だと思い込んでいたものが、実はJCF31333が演じる
 「ジェシーという人格」に過ぎないのでは無いか、という強烈な不安に捕われる。アイデンティティ崩壊の危機
 に、彼女は迎えに来たアダムに対しその思いの丈をすべてぶちまけてしまう。どんな役にもなりきれる私だけど、
 貴方の望む「本物のジェシー」だけには、私はなれない、と。困惑するアダム。
  だが突然現れた悪漢の凶刃が事態を急転させる。 狙われたジェシーを庇ってアダムが刺され、倒れる。意識が途切れるのを防ぐ為ジェシーは彼に話し掛け続ける。その自分の言葉によってやはり自分自身の「想い」が確かに存在する事に気付いていくのだが…
 (以下ネタバレにつき別項目)
 パンフレット
        
          |  | こちらがパンフレット。は、ハイエンド!?中身はスタッフ、キャストの紹介、インタビューの他、ロボット技術の現状についても何ページか割いているという
 舞台のパンフとしては変わった代物なのですが、中でも、なのが
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          |  | ←こちら。 いきなり海腹川背さん絵ですよ〜(笑)。びっくりしました。
 場所柄かTVでお馴染み系キャストのせいか、年輩の観客が多い
 芝居だったのですがこんなヲタク泣かせの仕掛けとは…
 近藤敏信氏が、このパンフ製作に協力しているROBONマガジン
 で連載をしている縁のようですね。
 |  雑感まあ当然のようにまともな観劇記にはなりません(笑)。ロボ的にはここがステキ〜!という徹底して偏った視点でひとつ。  まず、主演の七瀬なつみが良いですね。モノトーンの喋りが成長に従ってどんどん人間臭くなっていく、というお約束な部分の演じ分けだけでなく、状況に応じて突然現れる「ジェシーが過去に演じたキャラクター」の演技も
 見事でした。
 でも一番良かったのは外見ですか?(笑)。特に、岡田ファンファン大佐と高嶋黒木特佐の2大士官さんがでかい
 (180cm以上ある筈…)のに比してかなり小柄なのが、彼女がダンスシーン等で力余って大の男を放り
 投げちゃうシチュエーションでより効果をあげてると思います。オリジナル版の女優さんは、なんというか…
 こう…結構色々(失礼だな君)ごっついので、こういう効果は出ないかなあ、と。つるん、とした印象もプラげで
 宜しいかと。全編を通じてとてもキュートです。
  冒頭の昼メロ撮影シーンでは、エンジニアさんのスイッチングで停止/起動を繰り返します。こーゆーのがお好きな向きにはたまらんのではないかと(海外のフェチさんに多いそうですが)。また、簡易メインテナンス
 ハッチは背面下部にあり、メカが覗きます。充電時なんかにも開け閉め(衣装には予め穴が切ってあります)。
 ちなみにポスター等で使われている看護婦服はこの昼メロの衣装です。
 撮影システムの変更にともない使われなくなり、封印されている「状況に沿ったBGMを体内から流す機能」が、
 感情の昂りに合わせて勝手に起動し鳴ってしまうバグ持ち、という設定もあります。これはギャグやラブシーン
 などに効果的に使われてました。
  街に出てショッピングするシーンでは、衣装さんが用意してくれた服以外着た事が無いジェシーがいろいろ変なファッションで登場します。どうしていいかわからなくなっちゃった彼女が「裸の方がいいわ!」と店内で突然
 服を脱ぎ出すシーンはわかっててもちょっとドギマギものですよ。ロボっぽいし。
 さらに続くレストランのシーンも少々過激です。まず何故か出されたバケツ大の食前酒(アルコール激強)を、
 ひっくり返すような勢いで一気に、平然と流し込むシーンに続いて、それが原因で「排泄物収容袋」が一杯になって
 しまい、店内に鳴り響いてしまった警告アラームを止めなければ、というシーン。
 動くと漏れてしまいそうだし、ジェシー本人には作業できない仕様。やむを得ずテーブルクロスの下に潜り込み、
 彼女のスカートに手を突っ込んで作業するアダムだが、勝手が判らず苦戦。あちこちいじられて声をあげてしまう
 ジェシー。ようやくお腹のフタを開け、袋を取りだした時にはまわりにすっかり注目されて(しかも当然の方向に
 誤解されて)、というシークエンスは、勿論単にちょっとエッチなギャグシーンなのでしょうがロボフェチな
 観点からするとご馳走さま、というシチュエーションでした(笑)。ありがとうアラン・エイクボーン。
  さらに夜、ホテルの部屋に戻ってから。冗談めかしてはいますが、ジェシーがベイビードールの服に着替えて現れるのは、これは彼女なりにモーションをかけているんでしょうね。今までアダムがリードしていた関係が
 ここら辺で変化していきます。どう対応していいかわからなかったアダムはその意図に気付かない振りをするの
 ですが、ジェシーはここで明確に「怒る」訳です。
 そしてようやくいいムードになった二人ですが、コトに及びそうになる直前、彼女は正直に告白します。
 「一応女性の体として造られているけど…『お腹のフタをみたらどんな男もその気をなくす』っていわれた…」
 アダムが実際にはどうなのか、はこの直後闖入者よって邪魔されてしまい、判りません(笑)。
 さらに安ホテルでナイフを持った悪漢に二人が襲われるシーン。ジェシーは結局手も無く簡単に悪漢を組み伏せます。後のチャンドラー監督の弁によれば「彼女にダメージを与えるにはバズーカ砲が必要」との事ですから女優としては
 随分頑丈に造られてますね〜。どんな危険なシーンでもスタントや合成いらずですな。萌え。
 なんかロボの事を書いてたらこんな長文に…本当にソレ以外のことが書いていないレヴューになっちゃいましたが、どうしよう?(どうする?)いいでしょ?(いいよね?)以上、雑感でした。
 
 
 サマリー(続き)!!注意!!最後のシーンまでのネタバレを含みます!! アダムは思いのほか軽傷で、病院で手当てを受けている。局では事態を収拾するため、叔父以下、皆が揃っていた。ジェシーの消去を即刻に、と強硬に主張するカーラ。
 だが、自らの意志でジェシーが叔父に仰いだ評定は、皆にとって意外なものだった。
 今度の騒動はマスコミに事態が漏れた事が問題なのであり、その犯人がカーラであるという証拠を私は
 握っている。従って今回の責任はカーラが負うべきであり、支局長の任を解き、解雇する、と。
 そしてジェシーにはなんら咎なしとするばかりか、その後任の支局長に任命するとまで言い出す。ジェシーの
 可能性を目の当たりにして、人工知能やロボットのトップシェア企業をも握る立場の人間として、アンドロイドが
 どこまでできるのか試したくなった、と語る叔父もまた、いつの間にか彼女に惹かれていたのだ。
 だが、ジェシーはその話を断る。私を想ったばかりにアダムは傷付いた。人を傷つける機械は存在してはいけない、
 だからやはり私は消去されるべきなのだ、と頑なに自分を責める彼女に、チャンドラー等は翻意を必死に促す。曰く
 アダムがジェシーを大切に想う余り傷付くのを恐れる余り、自分を傷つけようとする行為。アダムがジェシーに
 向けた気持ちが愛ならば、ジェシーがアダムに向けた気持ちも同じ愛なのではないか?それは君がただ演じて
 いるだけでは生まれない、本当の君の気持ちなのではないのか?揺れるジェシーだったが、結局解体業者に連れて
 いかれてしまう。
 行き違いで病院から駆け付けるアダムだったが、ジェシーがもういない、と知らされ愕然とする。
 傷心の彼を慰めようと声を掛けたチャンドラーの酒の誘いさえ断り、また一人スタジオに佇むアダム。
 だがそこに突然、ジェシーが帰ってくる。アダムが書いたコメディの1シーンに引っ掛けたジョークでその変心の
 真意をはぐらかす彼女ではあったが、アダムとかわした抱擁の熱さがきっとその答えを示しているのだろう。
 明日からでも彼女は、新支局長として、彼の上司として、その性能を遺憾なく発揮するつもりのようだ。
 (完)
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